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■考え方の違い
本当のことを言うと、彼の浪人が決まったあとも
あたしは、遠距離恋愛を続けて彼と付き合っていくつもりでいた。
1年。考えると長いけれど、経ってみるとあっという間。
あたしは頑張れると思った。彼を待つつもりだった。
でも彼は違った。
彼はあたしの知らないところで、別れを決意していた。
あたしは彼が冗談を言っているのだと思った。
確かに彼は前から「浪人することになったら別れなきゃな」と言っていた。
でも、1年延びたからと言って別れるのはありえないことだと思った。
だって、つい何日か前にも「好き」とか「今が楽しい」とか話してたじゃない?
どうして急に別れることになっちゃうの??
その時のあたしにはわからなかった。
彼は言った。
「東京に行けば、いろいろあるよ。いろんな人と会いな。」
あたしは彼が言った言葉の意味が少しわかった気がした。
でも、わかりたくなかった。
ほかに好きな人ができたら、その時に彼と別れればいい話じゃない。
なにも今別れることはない。そうでしょ?
「もう今までみたいに会うことはできない。俺はこの1年勉強しなきゃいけない。
今年とは違って、もう後がないんだ。
これ以上遠距離恋愛を続けて、どんないいことがあるの?」
「姫はもうすぐ25歳になる。もう結婚しなきゃいけない年だよ。
俺たちは付き合っててもいつか別れる時が来る。
だって18歳と25歳。普通に考えたら、結婚できないよ。
姫にはいろんな人と出会ってほしい。本当に、積極的に探してほしいんだ。」
あたしはわかってしまった。
■優しさ
彼はあたしの結婚適齢期のことでいつも悩んでいた。
そんなの、あたしが好きで付き合ってるんだから気にしなくていいって言ったけど、
それでも彼はずっと考えてた。
悲しいけれど、女の人が輝ける時間は男の人よりも短い。
子どもを産むのだって、女の人には年齢制限がある。
どれだけ愛があっても、お金があっても、時間ばっかりはどうしようもない。
25歳の1年間を遠距離恋愛で潰してもいいのか?
結婚という保障があるわけでもなく、結婚して責任を取るわけでもない。
彼はあたしよりもずっとずっと先を見て、ずっとずっと深く考えて、結論を出したんだ。
これは彼の優しさなんだ。
あたしが彼にできることは、彼の思いを汲んであげることしかないと思った。
彼は本気だった。